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先輩の声

留学制度①

特任教授
石川 健
Ken Ishikakawa

  • 出身/岩手県・日本大学
  • 専門分野/小児腎臓病
  • 日本小児腎臓病学会 所属

Q. 3年間メルボルンに行かれていたとのことですが、留学に至る経緯を教えてください。

もともと私はバブル期に学生時代を過ごして、アルバイトでお金を貯めて海外はよく行っていました。そんなこともあり、入局した当初からいずれ海外に行きたいと思っていたんです。腎臓を専門にしたいと考えたのは入局後。当時は腎臓専門の先生がいなかったので、大学に戻ってきて腎臓外来を作ったんです。その後で初めて腎臓をやる後輩が入り、先にその先生が国内留学しました。戻ってきた後に、僕も行かせてもらおうと思って行ったという経緯です。

Q. 1人留学することで、残された側は負担が増える部分もあります。それでも「しっかり学んでほしい」という雰囲気があるのでしょうか?

それはあると思います。今も1人留学していますが、外を見てくるとそれまでの考え方や見方も変わるのでいいと思います。うちは比較的みんな、外に積極的に出している印象ですね。

Q. 留学先にオーストラリアのメルボルン大学を選んだ理由を教えてください。

腎臓外来を開いたのは僕が最初なので、コネクションが何もない状態でした。海外の学会に赴いて留学したい先生に何回かトライしましたけれど、ことごとく失敗。やはりコネクションがないと難しかったです。そんな中でアメリカのヒューストンとオーストラリアのメルボルンを候補にして考えたとき、子どもたちを連れての留学を希望していたので銃社会のアメリカは候補から除外。オーストラリアの先生に日本の知り合いの先生のつてで紹介していただいて行きました。家族一緒に3年間の留学でしたが、子どもたちもちょうど中学生から高校生になる時期で、いい時間を過ごせました。

Q. 腎臓の症例を多く経験したのですか?

臨床ではなく実験で行きました。もともと急性腎不全や慢性腎不全に興味があって治療は透析をやっていたので、その延長線上ですね。急性腎不全の病態を羊で実験していく施設で、主にずっと実験をしていました。当時の経験から身に付いた特技は、羊を捕まえることです(笑)。「テクニシャン」という研究を手助けしてくれる人がたくさんいるのですが、その人と一緒に外にいる実験用の羊を捕まえてケージに入れて飼いながら実験をします。それを全部一通りその人と一緒に進める感じで、なかなか貴重な体験でした。

研究テーマは急性腎不全でした。大腸菌を入れて敗血症になった羊は尿が出なくなるので、その病態や治療を解明していくことをやっていました。失敗も多く辛かったこともありますが、敗血症の治療と研究、病態に向き合ってきたことは今にも役立っています。臨床にまでそれが生かせているか…というと難しいところもありますが、海外でペーパーをたくさん読んだのはとても役立っていますね。

Q. もともと研究に興味が強かったのですか?

臨床は岩手でもできますし、あとは英語が拙いので…。もっとバリバリ話せたのであれば試験を受けて臨床という選択もありましたが、だから実験をしながら研究させていただきました。テクニカルタームは分かりやすいんですが、日常のジョークとかはすごく難しいですね。何を言っているかわからなくて、笑うところで笑えなかったり(笑)。

それでも外の世界を見たいというのと、岩手は田舎だけど世界とつながっているというのを見たいという思いがずっとありました。だからぜひみんなにもそうしてほしいですね。今はコロナの関係で留学事情も変わっていると思いますが、海外に留学したいという後輩がいたらぜひ応援したいと思っています。

私が入局したときはアメリカのサンフランシスコに拠点を置いている先生たちがいて、定期的に行っていたんです。その後はだんだんそういった先生が少なくなり、海外に行く人がほとんどいなくなった状態です。私はその中で行かせていただいたので、これからはどんどん行ってほしいと思いますし、サポートもしたいです。当時より行きやすい環境にはなっていますが、皆の心理的なハードルが上がっているのかは判然としませんが、個人的には海外留学で得るものは非常に大きいと思っています。

Q.留学で得られた学びや気づき、環境が違うことによる刺激など、振り返ってみていかがですか?

常にやりたいことをやってきて、留学もその一環です。ただ、確かに海外を見てくると、自分を外から見たり、日本と海外は違うことにも気付きます。海外はシステム化されていて、論文を書く人は論文を書く、データを取る人はデータを取る…という形で専門的なシステムになっています。QOLも確保できています。そしてトップは根性もあれば気合も入っていて、好きでフルに働いています。比べて日本は根性と情熱だけに頼っている部分があるのではないでしょうか。仕事をして結果を出すというシステムはできていても、サービス残業で患者さんを救う研究をすることもあります。

このように、海外と比較できる目を持てることはいいのかなと思います。海外の状況も踏まえて、和洋折衷でいいところ取りをできれば理想的です。日本はこれから医師の働き方改革がスタートします。システムを作らないまま働き方改革を進めると、患者さんに辛い思いをさせてしまうのではないか、この国の医療はどうなるのだろう…という不安があります。もしかするとこのような考え方は人と違うかもしれませんが、違った見方ができるようになったという気はします。

Q. 留学に興味のある方に向けて、メッセージをお願いします。

私は以前、医局長を5年ほど務めていました。その当時に困っていたのは、競争がないことです。医師が必要以上に尊重されすぎる雰囲気も感じていました。そのような状況では医療の進歩が停滞してしまうのでは…と危惧しており、競争がない中でモチベーションをどう上げるかを常に悩んでいました。

そうした中で、留学して外の世界を見ると違う見方を知ることができます。外の知見を吸収して帰って来て…というサイクルを繰り返せば、必然的にモチベーションは下がらないのではないかと思います。競争がない環境でできることはそれしかないのかなと。入局する方には「外で学ぶ」という選択肢がありますし、今いる若手の先生たちにもそのチャンスはある環境です。ですからぜひ皆さん、外で学んできてほしいですね。

Tagopedia

田子秘書が見た石川Dr.の
スゴイところ!

いつお休みされているのかなと思うくらい患者さんのことを第一に考え日々動いてくださって、おうちよりも病院にいる時間のほうが多いのでは…と思い心配してしまいます。

厳しさもある先生だと思いますが、その中に本当にとても優しさが溢れていて心から尊敬する先生です。

エピソードとしてひとつあるのが、岩手山に登ったあとに大学にいらっしゃった時は本当に驚きました! 午前中登ってきたんだーと軽くお話しされていて、2000メートルを越える山を数時間でこなし、そのあとお仕事される先生に本当に驚きました。

わたしなら朝イチから登っても夕方やっと下山になり、しばらくきっと動けません…笑

たくさんの意味で本当にすごい先生で、心から尊敬しています。