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岩手医科大学小児科専攻医プログラム

1. プログラムの概要

小児科学は、成長と発達の過程にある小児を対象として、その身体と心の問題を扱う医学です。その領域は極めて広く、胎児期から思春期までのすべての医学領域の知識が必要です。そのため、小児科医にはgeneral physician としての能力が求められます。必須疾患をもれなく経験することで、病歴から問題点を明確化し、鑑別診断、検査計画、診断的アプローチ、治療計画を適切に遂行する能力と、小児に特有の基本的手技を習得するとともに、チーム医療・問題対応能力・安全管理能力を獲得して、保護者への対応と支援の実際を身につける必要があります。

小児科専門医を取得するためには、年齢・領域に偏りがない専門研修を行うことが必要です。当院の小児医療センターは、多くの診療科との協働により、24 時間365 日小児の高度医療を提供しています。入院施設は附属病院7 階に集約され、小児病棟「もりもり広場TM」58 床と総合周産期母子医療センターの新生児集中治療室(neonatal intensive care unit,NICU)24床、回復期治療室(growing care unit,GCU)14床の計96床からなります。集中治療を要する子どもは附属病院4階の小児集中治療室(pediatric intensive care unit, PICU)や循環器集中治療室(circulatory intensive care unit, CICU )、一般集中治療室(general intensive care unit, GICU)で対応しています。

初期研修終了後に、各専門診療グループ(新生児、循環器、血液・腫瘍、神経、腎臓、消化器、アレルギー、内分泌)を専攻医数名が重複しないように、3か月から6か月ごとにローテートします。この間に指導医とともに外来診療と夜間診療に従事します。また、小児に頻度の高いcommon diseaseや小児保健全般に関わる研修は、16 か所ある関連病院の中で1 年間に3か月から6か月行います。さらに特例として1 年目を当院で、2 年目以降を昭和大学病院とその関連病院で研修するプログラムを用意しています。
以上3年間かけて研修することで、プライマリ・ケアから高度医療までを一人で実践できる小児科医を目標にしたプログラムになっています。詳しいことは岩手医科大学小児科ホームページをご覧ください。

岩手県の面積は、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県を合わせた面積よりも大きいため、当院では医療情報通信技術を活用して、地域関連施設との間でネットワークシステムを構築しています。電子カルテの端末と一体化したテレビ会議システムを利用して医療支援を行うとともに、当科の症例検討会等には遠隔地域関連病院に勤務中であっても参加することが可能で、若手医師の教育に役立っています。

小児科専門医受験者は、査読がある雑誌に筆頭著者として最低1 編の論文掲載が必須です。各専門グループで経験した症例は積極的に学会発表および論文作成ができるように指導しています。大学病院の特性を活かし大学院に在籍しながら専攻医プログラムを遂行することが可能なプランも準備しています。
小児科専攻医は、日本小児科学会が定めた「小児科専門医の役割」に関する到達目標の「子どもの総合診療医」、「育児・健康支援者」、「子どもの代弁者」、「学識・研究者」、「医療のプロフェッショナル」の5つの役割を3年間で身に付けることを目指してください。

2.専門研修はどのように行われるか

3年間の小児科専門研修では、日本小児科学会が小児科医の到達目標―小児科専門医の教育目標―改訂第7版(日小児会誌 2020;124(4):723-770)に定めた「小児科医の到達目標」のレベルAまたはBの臨床能力を獲得することを目指して研修を行います。到達度の自己評価と指導医からのアドバイスを受けるために、「小児科専門研修手帳」を常に携帯し、定期的に振り返りながら研修を進めてください。

2-1 年間スケジュール

2-2 週間スケジュール

当プログラムでは様々な知識・技能の習得機会(教育的行事)を設けています。

  1. 朝カンファレンス・チーム回診(毎日):専攻医が新入院患者のプレゼンテーションを行う。チーム回診を行って指導医からフィードバックを受け、指摘された課題について学習を進める。
  2. 周産期カンファレンス(毎週月曜):産科、新生児集中治療室(NICU)、関連診療科と合同で、超低出生体重児、先天異常、手術症例、死亡例等の症例検討を行い、臨床倫理等の小児科専門医のプロフェッショナリズムについても学ぶ。
  3. 抄読会・研究報告会(毎週火曜):論文を抄読して発表し、意見交換を行う。研究報告会では講座で行われている研究について討論を行い、研究の歴史や研究の意義、研究計画の妥当性、研究手法、研究の国際的位置づけ、医師の社会的責任等について学ぶ。
  4. 症例検討会(毎日):診断・治療困難例、臨床研究症例等について専攻医が報告し、指導医からのフィードバック、質疑を受ける。
  5. テレビ会議遠隔合同勉強会(月1回):基幹病院と関連病院がテレビ会議システムを利用して遠隔医療支援をし、また、症例検討会や外部講師の講演会を開催して若手医師の教育に当たる。
  6. CPC:死亡・剖検例、難病・稀少症例についての病理診断を検討する。
  7. 振り返り:毎月1回、専攻医と指導医が1対1またはグループで集まり、1か月間の研修を振り返る。研修上の問題点や悩み、研修(就業)環境、研修の進め方、キャリア形成等についてインフォーマルな雰囲気で話し合う。
  8. 学生・初期研修医に対する指導:病棟や外来で医学生・初期研修医を指導する。後輩を指導することは、自分の知識を整理・確認することにつながることから、当プログラムでは専攻医の重な取組と位置づけている。
  9. 学習環境として、机、図書館、インターネット環境、シミュレーションセンターを整備している。

2-3 臨床現場を離れた学習

以下の学習機会を利用して、到達目標達成の助けとしてください。

  1. 日本小児科学会学術集会、分科会主催の学会、地方会、研究会、セミナー、講習会等へ参加
  2. 日本小児科学会主催の「小児科専門医取得のためのインテンシブコース」(1泊2日):到達目標①に記載された24 領域に関するポイントを3年間で網羅して学習できるセミナー
  3. 学会等での症例発表
  4. 日本小児科学会オンラインセミナー:医療安全、感染対策、医療倫理,医療者教育等
  5. 日本小児科学会雑誌等の定期購読および症例報告等の投稿
  6. 論文執筆:専門医取得のためには、小児科に関する論文を査読制度のある雑誌に最低1編報告しなければなりません。論文執筆には論文作成や日本語作文の学習が必要です。早めに準備を始めてください。

2-4 自己学習

到達目標と研修手帳に記載されている小児疾患、病態、手技等の項目を自己評価しながら、不足した分野・疾患については自己学習を進めてください。

2-5 大学院進学

専門研修期間中、小児科学の大学院への進学は可能ですが、専門研修に支障が出ないように、プログラム・研修施設について事前相談が必要です。小児科診療に従事しながら臨床研究を進めるのであればその期間は専門研修として扱われますが、研究内容によっては専門研修が延長になる場合もあります。

3. 到達目標

小児科医の到達目標―小児科専門医の教育目標―改訂第7版(日小児会誌 2020;124(4):723-770)と臨床研修医手帳を参照。

3−1 習得すべき知識・技能・研修・態度等

  1. 「小児科専門医の役割」に関する到達目標:日本小児科学会が定めた小児科専門医としての役割を3年間で身につける。
  2. 「習得すべき症候」に関する到達目標:日本小児科学会が定めた経験すべき130症候のうち8割以上(114症候以上)を経験する。
  3. 「習得すべき疾患・病態」に関する到達目標:日本小児科学会が定めた経験すべき198疾患のうち、8割以上(158疾患以上)を経験する。
  4. 「習得すべき診療技能と手技」に関する到達目標:日本小児科学会が定めた経験すべき20技能のうち、8割以上(16技能以上)を経験する。

3−2 学問的姿勢

当プログラムでは、3年間の研修を通じて科学的思考、生涯学習の姿勢、研究への関心等の学問的
姿勢も学んでいきます。

  1. 受持患者について、常に最新の医学情報を検索し、診断・治療に反映できる。
  2. 高度医療を経験し、病態・診断・治療の臨床研究に協力する。
  3. 国際的な視野を持って小児医療を行い、国際的な情報発信・貢献に協力する。
  4. 指導医や医療スタッフからの評価を謙虚に受け止め、振り返りと生涯学習ができるようにする。
  5. 医師に必要なコアコンピテンシー、倫理性、社会性を身につける。

4.施設群による専攻医プログラムと地域医療についての考え方

4−1 年次毎の研修計画

日本小児科学会では研修年次毎の達成度(マイルストーン)を定めています(下表)。小児科専門
研修においては広範な領域をローテーションしながら研修するため、研修途中においてはマイルスト
ーンの達成度は専攻医ごとに異なっていて構いませんが、研修修了時点で一定レベルに達しているこ
とが望まれます。研修3年次はチーフレジデントとして専攻医全体のとりまとめ、後輩の指導、研修
プログラムへの積極的関与等、責任者としての役割が期待されます。

4−2 研修施設群と研修モデル

小児科専攻医プログラムは3年間(36か月間)と定められています。諸事情により十分な研修ができなかった場合は研修期間を延長したり、研修先の変更をすることがあります。本プログラムにおける研修施設群と、年次毎の研修モデルは下表のとおりです。地域医療研修は16の専門研修連携施設の中で経験するようにプログラムされています。

一枠は3か月単位、1:岩手医大附属病院、2:二戸病院、3:中央病院、4:中部病院、5:磐井病院、6:大船渡病院、7:釜石病院、8:宮古病院、9:久慈病院、10:療育センター、11:盛岡医療センター、12:川久保病院、13:北上済生会病院、14:盛岡赤十字病院、15:八戸赤十字病院、16:かづの厚生病院、17:みちのく療育園、18:昭和大学病院

初期研修終了後、1:岩手医科大学附属病院(基幹病院)に所属し、外来、小児病棟(新生児、循環器、血液・腫瘍、神経、腎臓、消化器、アレルギー、内分泌)を経験後、2~17の関連病院において、専攻医1~2人が配属となり、3~6か月ごとにローテーションして3年間の研修を行うシステムとなっています。応急対応の日当直は、始めは指導医とともに従事し、2~3か月後から一人でできるようにしています。なお上記モデルの研修ローテーションの場所や順番は変更されることがあります。専攻医は特例として1年目を岩手医大で、2年目以降を18:昭和大学病院とその関連病院で研修します。

4−3 地域医療について

当プログラムは岩手医科大学附属病院小児科を基幹施設とし、岩手県全域の小児地域医療に十分配
慮したものです。1年間のうち3~6か月は関連病院において「地域小児総合医療」を経験するよう
にプログラムされています。地域医療においては、改訂第7版の小児科専門医の到達目標分野24「地
域小児総合医療」を参照して、地域医療に関する能力を研鑽してください。

5.評価

専門研修を有益なものとし、到達目標達成を促すために、当プログラムでは指導医が専攻医に対し
て様々な形成的評価(アドバイス、フィードバック)を行います。専攻医自身も常に自己評価を行う
ことが重要です(振り返りの習慣、研修手帳の記載等)。毎年2回、各専攻医の研修の進捗状況をチ
ェックし、3年間の研修修了時には目標達成度を総括的に評価して、研修修了認定を行います。

6.修了判定

  1. 評価項目
    (1) 小児科医として必須の知識および問題解決能力、(2) 小児科専門医としての適切なコミュニケーション能力および態度について、指導医・同僚研修医・看護師等の評価に基づき、専攻医プログラム管理委員会で修了判定を行います。
  2. 評価基準と時期
    (1) の評価:簡易診療能力評価 Mini-CEXを参考にします。指導医は専攻医の診療を10 分程度観察して研修手帳に記録し、その後研修医と5~10 分程度振り返ります。評価項目は、病歴聴取、診察、コミュニケーション(態度)、臨床判断、プロフェッショナリズム、まとめる力・能率、総合的評価の7項目です。毎年2回(9月頃と3月頃)、3年間の専門研修期間中に合計6回行います。
    (2) の評価:360 度評価を参考にします。専攻医プログラム統括責任者、連携施設の専門研修担当者、指導医、小児科看護師、同時期に研修した専攻医等が、①総合診療能力、②育児支援の姿勢、③代弁する姿勢、④学識獲得の努力、⑤プロフェッショナルとしての態度について、概略的な360 度評価を行います。
    (3) 総括判定:専攻医プログラム管理委員会が上記のMini-CEX, 360 度評価を参考に、研修手帳の記載、症例サマリー、診療活動・学術活動等を総合的に評価して、修了判定します。研修修了判定がおりないと、小児科専門医試験を受験できません。
    (4) 「妊娠・出産、産前後に伴う研修期間の休止」、「疾病での休止」、「短時間雇用形態での研修」、「専門研修プログラムを移動する場合」、「その他一時的にプログラムを中断する場合」に相当する場合は、その都度諸事情および研修期間等を考慮して判定を行います。
<専攻医が研修の修了に向けて行うべきこと>

プログラム修了認定、小児科専門医試験の受験のためには,以下の条件が満たされなければなりません。チェックリストとして利用してください。
□ 1「小児科専門医の役割」に関する目標達成(研修手帳)
□ 2「経験すべき症候」に関する目標達成(研修手帳)
□ 3「経験すべき疾患」に関する目標達成(研修手帳)
□ 4「習得すべき診療技能と手技」に関する目標達成(研修手帳)
□ 5 Mini-CEXによる評価(年2回、合計6回、研修手帳)
□ 6 360度評価(年1回、合計3回)
□ 7 30症例のサマリー(領域別指定疾患を含むこと)
□ 8 講習会受講:医療安全、医療倫理、感染防止等
□ 9 筆頭論文1編の執筆(小児科関連論文、査読制度のある雑誌掲載)

7. 専攻医プログラム管理委員会

7−1 専攻医プログラム管理委員会の業務

本プログラムでは、基幹施設である岩手医科大学小児科に、基幹施設の統括責任者と副統括責任者、および医師以外に、看護部、薬剤部、検査部、および事務の多種職のメンバーから成る「専攻医プログラム管理委員会」を設置しています。また、連携施設には「専攻医プログラム連携施設担当者」を置き、さらに基幹施設の統括責任者、副統括責任者等とともに、「小児科専攻医研修管理委員会」を設置しています。統括責任者は専攻医プログラム管理委員会と小児科専攻医研修管理委員会を定期的に開催し、①研修カリキュラムの作成・運用・評価、②個々の専攻医に対する研修計画の立案、③研修の進捗状況の把握、④研修修了認定(専門医試験受験資格の判定)、⑤研修施設・環境の整備、⑥指導体制の整備、⑦学会・専門医機構との連携、情報収集、⑧専攻医受け入れ人数の決定、⑨専門研修を開始した専攻医の把握と登録、⑩サイトビジットへの対応の役割と権限を担います。

7−2 専攻医の就業環境

本プログラムの統括責任者と研修施設の管理者は、専攻医の勤務環境と健康に対する責任を負い、専攻医のために適切な労働環境の整備を行います。専攻医の心身の健康に配慮し、勤務時間が週80時間を超えないよう、また過重な勤務にならないよう、適切な休日の保証と工夫を行うよう配慮します。当直業務と夜間診療業務の区別と、それぞれに対応した適切な対価の支給を行い、当直あるいは夜間診療業務に対しての適切なバックアップ体制を整備します。研修年次毎に専攻医と指導医は専攻医指導施設に対する評価も行い、そこには労働時間、当直回数、給与、労働条件についての内容が含まれ、その内容は専攻医プログラム管理委員会に報告されます。

7−3 専攻医プログラムの改善

  1. 専攻医プログラム評価(年度毎):専攻医はプログラム評価表に記載し、毎年1回(年度末)専攻医プログラム管理委員会に提出してください。専攻医からプログラム、指導体制等に関していかなる意見があっても、専攻医はそれによる不利益を被ることはありません。
    「指導に問題あり」と考えられる指導医に対しては、基幹施設・連携施設の担当者、あるいは専攻医プログラム管理委員会として対応措置を検討します。問題が大きい場合、専攻医の安全を守る必要がある場合には、専門医機構の小児科領域研修委員会の協力を得て対応します。
  2. 専攻医プログラム評価(3年間の総括):3年間の研修修了時には、当プログラム全般について研修カリキュラムの評価を記載し、専門医機構へ提出してください。

7−4 専攻医の採用と修了

  1. 受け入れ専攻医数:本プログラムの毎年の専攻医募集人数は、専攻医が3年間の十分な専門研修を行えるように配慮されています。本プログラムの指導医総数は51名(基幹施設23名、専門研修連携施設28名)ですが、整備基準で定めた過去3年間の小児科専門医の育成実績(平均4.3名+5名以内)から9名を受け入れ人数とします。
    受け入れ人数:9名
  2. 採用:専攻医プログラム管理委員会は、研修プログラムを毎年4~5月に公表し、5~6月に説明会を実施して応募者を募集します。研修プログラムへの応募者は、9月30日までに、プログラム統括責任者宛に所定の「応募申請書」および履歴書等、定められた書類を提出してください。申請書は、研修プログラムのwebsite(http://www.iwate-med. ac.jp/hospital/ 就職研修を希望の方に→臨床研修→医師卒後臨床研修センター→専門研修→募集要項)よりダウンロードするか、電話あるいはe-mail で問い合わせてください(Tel: 019-613-7111 / e-mail:satoshifaction58@gmail.com)。原則として10月中に書類選考および面接を行い、専攻医プログラム管理委員会で審査のうえ採否を決定します。なお特例に応募する専攻医は、当院および昭和大学の両方で面接を行います。採否は文書で本人に通知します。採用の連絡時期は11月30日です。
  3. 研修開始届け:研修を開始した専攻医は、各年度の5月30日までに研修開始届を専攻医プログラム管理委員会に提出してください。
  4. 修了:6.修了判定参照。

7−5 小児科研修の休止・中断、プログラム移動、プログラム外研修の条件

  1. 研修の休止・中断期間を除いて3年以上の専門研修を行わなければなりません。勤務形態は問いませんが、専門研修であることを統括責任者が認めることが絶対条件です(大学院や留学等で常勤医としての勤務形態がない期間は専門研修期間としてはカウントされません)
  2. 出産育児による研修の休止に関しては、研修休止が6か月までであれば、休止期間以外での規定の症例経験がなされ、診療能力が目標に到達していると専攻医プログラム管理委員会が判断すれば、3年間での専攻医研修修了を認めます。
  3. 病気療養による研修休止の場合は、研修休止が3か月までであれば、休止期間以外で規定の症例経験がなされ、診療能力が目標に到達していると専攻医プログラム管理委員会が判断すれば、3年間での専攻医研修修了を認めます。
  4. 諸事情により研修プログラムを中断し、プログラムを移動せざるをえない場合には、日本専門医機構内に組織されている小児科領域研修委員会へ報告、相談し、承認された場合プログラム統括責任者同士で話し合いを行い、専攻医のプログラム移動を行います。

7− 6 研修に対するサイトビジット(訪問調査)

研修プログラムに対する外部からの監査・調査に対して、基幹施設および連携施設の責任者は真摯
に対応します。日本専門医機構からのサイトビジットに当たっては、求められた研修関連の資料等を
提出し、また、専攻医、指導医、施設関係者へのインタビューに応じ、サイトビジットによりプログ
ラムの改善指導を受けた場合には、専攻医プログラム管理委員会が必要な改善を行います。

8.実績記録システム、マニュアル等

専門研修実績記録システム)、研修マニュアル、指導医マニュアルは別途定めます。

9.指導医

指導医は、臨床経験7年以上の経験豊富な小児科専門医で、適切な教育・指導法を習得しており、総括指導医および認定小児科専門医は1回以上の専門医更新をしており、かつ日本小児科学会が主催する指導医講習会もしくはオンラインセミナーで研修を受け、日本小児科学会から指導医としての認定を受けています。

10.Subspecialty 領域との連続性

現在、小児科に特化したsubspecialty 領域としては、周産期専門医・新生児(日本周産期新生児医学会)、小児循環器専門医(日本小児循環器病学会)、小児血液・がん専門医(日本小児血液がん学会)、小児神経専門医(日本小児神経学会)の4領域があります。
本プログラムでは、基本領域の専門医資格取得から、subspecialty 領域の専門研修へと連続的な研修が可能となるように配慮します。Subspecialty 領域の専門医資格取得の希望がある場合、3年間の研修プログラムの変更はできませんが、可能な範囲で専攻医が希望するsubspecialty 領域の疾患を経験できるよう、研修計画を立案します。ただし、基本領域専門研修中に経験した疾患は、subspecialty領域の専門医資格申請に使用できない場合があります。

11.新専門医制度下の岩手医科大学小児科カリキュラム制(単位制)による研修制度

Ⅰ.はじめに

1. 岩手医科大学小児科の専門研修は「プログラム制」を基本とする。
2. 岩手医科大学小児科の専門研修における「カリキュラム制(単位制)」は、「プログラム制」で
研修を行うことが適切でない合理的な理由がある場合に対する「プログラム制」を補完する制度であ
る。

Ⅱ. カリキュラム制(単位制)による研修制度

1. 方針

  1. 岩手医科大学小児科の専門研修は「プログラム制」を基本とし、「プログラム制」で研修を行うことが適切でない合理的な理由がある場合には、「カリキュラム制(単位制)」による研修を選択できる。
  2. 期間の延長により「プログラム制」で研修を完遂できる場合には、原則として、「プログラム制」で研修を完遂することを推奨する。
  3. 小児科専門研修「プログラム制」を中断した専攻医が専門研修を再開する場合には、原則として、「プログラム制」で研修を再開し完遂することを推奨する。
  4. カリキュラム制による専攻医は基幹施設の指導責任医の管理を受け、基幹施設・連携施設で研修を行う。

2. カリキュラム制(単位制)による研修制度の対象となる医師

  1. 義務年限を有する医科大学卒業生、地域医療従事者(地域枠医師等)
  2. 出産、育児、介護、療養等のライフイベントにより、休職・離職を選択する者
  3. 海外・国内留学する者
  4. 他科基本領域の専門研修を修了してから小児科領域の専門研修を開始・再開する者
  5. 臨床研究医コースの者
  6. その他、日本小児科学会と日本専門医機構が認めた合理的な理由のある場合

※ Ⅱ.2.1)2)3)の者は、期間の延長による「プログラム制」で研修を完遂することを原則とするが、期間の延長による「プログラム制」で研修を完遂することができない場合には、「カリキュラム制(単位制)」による研修を選択できる。

Ⅲ.カリキュラム制(単位制)における専門医認定の条件

1.岩手医科大学小児科のカリキュラム制(単位制)における専門医認定の条件は、以下の全てを満たしていることである。

  1. 日本小児科学会の定めた研修期間を満たしていること
  2. 日本小児科学会の定めた診療実績および臨床以外の活動実績を満たしていること
  3. 研修基幹施設の指導医の監督を定期的に受けること
  4. プログラム制と同一またはそれ以上の認定試験に合格すること

Ⅳ.カリキュラム制(単位制)における研修

1.カリキュラム制(単位制)における研修施設

1)「カリキュラム制(単位制)」における研修施設は、岩手医科大学小児科(以下、基幹施設)および専門研修連携施設(以下、連携施設)とする。

2.研修期間として認める条件

1) プログラム制による小児科領域の「基幹施設」または「連携施設」における研修のみを、研修期間として認める。
① 「関連施設」における勤務は研修期間として認めない。
2)研修期間として認める研修はカリキュラム制に登録してから10年間とする。
3) 研修期間として認めない研修
① 他科専門研修プログラムの研修期間
② 初期臨床研修期間

3.研修期間の算出

1) 基本単位
① 「フルタイム」で「1ヶ月間」の研修を1単位とする。
2) 「フルタイム」の定義
① 週 31 時間以上の勤務時間を職員として所属している「基幹施設」または「連携施設」での業
務に従事すること。
3) 「1ヶ月間」の定義
① 暦日(その月の 1 日から末日)をもって「1ヶ月間」とする。
4) 非「フルタイム」勤務における研修期間の算出

※「小児専従」でない期間の単位は 1/2 を乗じた単位数とする

5)職員として所属している「基幹施設」または「連携施設」での日直・宿直勤務における研修期間の算出
① 原則として、勤務している時間として算出しない。
(1) 診療実績としては認められる。
6)職員として所属している「基幹施設」または「連携施設」以外での日勤・日直(アルバイト)・宿直(アルバイト)勤務における研修期間の算出
① 原則として、研修期間として算出しない。
(1) 診療実績としても認められない。
7) 産休・育休、病欠、留学の期間は、その研修期間取り扱いをプログラム制同様、最大6か月までを算入する
8) 「専従」でない期間の単位は、1/2 を乗じた単位数とする。

4.必要とされる研修期間

1) 「基幹施設」または「連携施設」における 36単位以上の研修を必要とする。
① 所属部署は問わない
2) 「基幹施設」または「連携施設」において、「専従」で、36単位以上の研修を必要とする。
3) 「基幹施設」または「連携施設」としての扱い
① 受験申請時点ではなく、専攻医が研修していた期間でのものを適応する。

5.「専従」として認める研修形態

1) 「基幹施設」または「連携施設」における「小児部門」に所属していること。
① 「小児部門」として認める部門は、小児科領域の専門研修プログラムにおける「基幹施設」および「連携施設」の申請時に、「小児部門」として申告された部門とする。
2) 「フルタイム」で「1ヶ月間」の研修を1単位とする。
①職員として勤務している「基幹施設」または「連携施設」の「小児部門」の業務に、週31時間以
上の勤務時間を従事していること。
②非「フルタイム」での研修は研修期間として算出できるが「専従」としては認めない。
(1) ただし、育児・介護等の理由による短時間勤務制度の適応者の場合のみ、非 「フルタイム」での研修も「専従」として認める。
i) その際における「専従」の単位数の算出は、Ⅳ.3.4)の非「フルタイム」勤務における研修期間の算出表に従う。
3) 初期臨床研修期間は研修期間としては認めない。

Ⅴ.カリキュラム制(単位制)における必要診療実績および臨床以外の活動実績

1.診療実績として認める条件

1) 以下の期間の経験のみを、診療実績として認める。
①職員として勤務している「基幹施設」および「連携施設」で、研修期間として算出された期間内の経験症例が、診療実績として認められる対象となる。
2) 日本小児科学会の「臨床研修手帳」に記録、専門医試験での症例要約で提出した経験内容を診療実績として認める。
① ただし、プログラム統括責任者の「承認」がある経験のみを、診療実績として認める。
3) 有効期間として認める診療実績は受験申請年の 3 月 31 日時点からさかのぼって 10 年間とする。
4) 他科専門プログラム研修期間の経験は、診療実績として認めない。

2.必要とされる経験症例

1) 必要とされる経験症例は、「プログラム制」と同一とする。 《「プログラム制」参照》

3.必要とされる臨床以外の活動実績

1)必要とされる臨床以外の活動実績は、「プログラム制」と同一とする。 《「プログラム制」参照》

4.必要とされる評価

1)小児科到達目標25領域を終了し、各領域の修了認定を指導医より受けること
各領域の領域到達目標及び診察・実践能力が全てレベルB以上であること
2)経験すべき症候の80%以上がレベルB以上であること
3)経験すべき疾患・病態の80%以上を経験していること
4)経験すべき診療技能と手技の80%以上がレベルB以上であること
5)Mini-CEX及び360度評価は1年に1回以上実施し、研修修了までにMini-CEX6回以上、360度評価は3回以上実施すること
6)マイルストーン評価は研修修了までに全ての項目がレベルB以上であること

Ⅵ.カリキュラム制(単位制)による研修開始の流れ

1.カリキュラム制(単位制)による研修の新規登録

1) カリキュラム制(単位制)による研修の登録
① カリキュラム制(単位制)による研修を希望する医師は、日本専門医機構の「カリキュラム制(単位制)による研修」として新規登録する。また「小児科専門医新規登録カリキュラム制(単位制)による研修開始の理由書」《別添》を、学会に申請し許可を得る。
② 「小児科専門医新規登録カリキュラム制(単位制)による理由書」には、下記の項目を記載しなければならない。
(1) 「プログラム制」で研修を行うことが適切でない合理的な理由
(2) 主たる研修施設
ⅰ) 管理は基幹施設が行い、研修は基幹施設・連携施設とする。
2) カリキュラム制(単位制)による研修の許可
① 日本小児科学会および日本専門医機構は、カリキュラム制研修を開始する理由について審査を行い、Ⅱ.2)に記載のある理由に該当する場合は、研修を許可する。

2.小児科専門研修「プログラム制」から小児科専門研修「カリキュラム制(単位制)」への移行登録

1)小児科専門研修を「プログラム制」で研修を開始するも、研修期間途中において、期間の延長による「プログラム制」で研修ができない合理的な理由が発生し「カリキュラム制 (単位制)」での研修に移行を希望する研修者は、小児科専門研修「プログラム制」から 「カリキュラム制(単位制)」への移行登録の申請を行う。
2) 小児科専門研修「プログラム制」から「カリキュラム制(単位制)」への移行の申請
① カリキュラム制(単位制)による研修を希望する医師は、「小児科専門医制度移行登録 カリキュ
ラム制(単位制)による研修開始の理由書」《別添》を、日本小児科学会及び日本専門医機構に申請する。
② 「小児科専門医制度移行登録カリキュラム制(単位制)による理由書」には、下記 の項目を登録しなければならない。
(1) 「プログラム制」で研修を完遂することができない合理的な理由
(2) 主たる研修施設
ⅰ) 主たる研修施設は「基幹施設」もしくは「連携施設」であること。
3) カリキュラム制(単位制)による研修の移行の許可
① 学会および専門医機構は、カリキュラム制研修を開始する理由について審査を行い、Ⅱ.2)に記載のある理由に該当する場合は、研修を許可する。
② 移行登録申請者が、学会の審査で認定されなかった場合は、専門医機構に申し立てることができる。
(1) 再度、専門医機構で移行の可否について、日本専門医機構カリキュラム委員会(仮)において、審査される。
4) カリキュラム制(単位制)による研修の登録
① カリキュラム制(単位制)による研修への移行の許可を得た医師は、日本専門医機構の「カリキュラム制(単位制)による研修」として、移行登録する。
5) 「プログラム制」から「カリキュラム制(単位制)」への移行にあたっての研修期間、 診療実績の取り扱い
① 「プログラム制」時の研修期間は、「カリキュラム制(単位制)」への移行後においても研修期間として認める。
② 「プログラム制」時の診療実績は、「カリキュラム制(単位制)」への移行後においても診療実績として認める。
(1) ただし「関連施設」での診療実績は、「カリキュラム制(単位制)」への移行にあたっては、診療実績として認めない。

3.小児科以外の専門研修「プログラム制」から小児科専門研修「カリキュラム制(単位制)」への移行登録

1) 小児科以外の専門研修「プログラム制」から小児科専門研修「カリキュラム制(単位制)」への移行は認めない。
① 小児科以外の専門研修「プログラム制」の辞退者は、あらためて、小児科専門研修「プログラム制」で研修を開始するか、もしくはⅥ.1に従い小児科専門研修「カリキュラム制(単位制)」にて、専門研修を開始する。

4. 「カリキュラム制(単位制)」の管理

1)研修全体の管理・修了認定は「プログラム制」と同一とする。《「プログラム制」参照》
《別添》 「小児科専門医新規登録 カリキュラム制(単位制)による研修の理由書」および 「小児科専門医制度移行登録 カリキュラム制(単位制)による研修の理由書」