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診療グループについて

先天性心疾患・小児循環器疾患診療グループ

沿革

岩手医科大学の先天性心疾患に対する治療は超音波検査等による詳細な心疾患診断が可能となる遥か以前、1970年代に始まりました。以降岩手医科大学小児科・小児循環器班は1997年に東北で初めて循環器医療専門施設として設立された循環器医療センターの一部門、循環器小児科として小児心疾患診療のレベルを高め、超音波検査やCT検査による非侵襲的かつ詳細な画像診断、時には高い精度のカテーテル検査を背景として心臓外科による手術を支援し、また術後の患者様に寄り添い、長期的視野に基づく科学的な内科管理を提供してまいりました。

2017年に小山耕太郎教授が小児科主任教授に就任されたのを機に、“心臓以外の臓器の健康も維持できる心機能・血管機能”を担保できる医療、臓器中心から“こども”中心の医療を目指し、東北随一・国内最先端の心疾患診療を提供できる高い専門性を維持しながら、2019年以降小児科の一部門として機能しています。

先天性心疾患とは

生まれつき心臓や血管の形・走行が一般的なものと異なることにより、 心臓や血液の働きに不具合が生じる病気を指します。 先天性心疾患を持って生まれてくる赤ちゃんは約100人に一人程度と考えられており、決して稀なことではありません。 先天性心疾患の種類は多岐にわたり、同じ病気の名前がついていても、その重症度や治療方法はさまざまです。私たちは小児心疾患の患者様の治療において、心臓血管形態の修復はゴールではなく、”修復後70年以上を健康に過ごすゴールを目指したスタート地点”と捉えています。小児期の正確な病態把握と治療戦略は成人期・壮年期までより良い健康状態を維持するために最も重要な要素です。より良い状態で成人期以降も健康な人生を送って頂くために、各発育段階に応じ、低侵襲な治療が良いのか、しっかり治す治療戦略が良いのか、その時点での科学的根拠に基づいた治療戦略を提案しています。

先天性心疾患・小児心臓病の診療にあたる専門医が小児循環器専門医です。成人の循環器内科専門医数15,205人 (日本循環器学会 2021年8月時点)に対して小児循環器専門医661人 (2023年4月)であり, 先天性心疾患の専門医数はとても限られています。長い歴史の一方で進歩の早い分野でもあり、小児循環器専門医であっても先端施設で常に研鑽を積み続けることが重要です。岩手医科大学小児科には6人の小児循環器のエキスパートが所属し長期的視野に基づいた最適な医療を提案しています。

成人先天性心疾患とは

成人先天性心疾患は先天性心疾患の治療をうけた、あるいは未治療の状態で成人期に至った患者様の心臓の状態や患者様を指します。1980年代には成人した先天性心疾患の患者様はわずかでしたが、2020年には先天性心疾患の90%程度の患者様が成人期まで過ごしていただくことができるようになりました。同時に、以前に治療を受けた状態の不具合や合併症等が明らかとなり、先天性心疾患の病態・形態を熟知した医師でないと診療が困難な患者様が増えております。同時に小児期から続く心臓の負担が原因となって、腎臓や肝臓、中枢神経に障害が出てくることがあります。このような患者様の心臓および全身管理に特化した医師が成人先天性心疾患専門医で、国内に191人 (2022年4月現在. 小児循環器専門医の14%、循環器内科専門医の0.4%)の専門医が診療に従事しています。岩手医科大学小児科では主に18歳以下の心疾患の患者様の新規患者様を受け付けておりますが、18歳を超えた重症先天性心疾患の患者様やセカンドオピニオンを御希望の患者様の新規患者様も、御希望に応じて診療いたしますのでかかりつけ医より御紹介いただけましたら幸いです。

診療内容・症例数

小児循環器班では、診断、カテーテル治療、不整脈、心不全、胎児心臓病等、小児心疾患治療の各分野に特化した医師が妥協なき研鑽を積み、最先端の小児循環器医療を提供する、小児病院さながらの診療体制を構築しています。また近年では心臓修復後の成人期の課題も明らかになり、適切に経過観察する重要性も強調されてきました。岩手県内のすべての小児循環器専門医・成人先天性心疾患専門医が所属し、先天性心疾患の小児・成人問わず東北全域や関東地方からも御紹介頂き、治療に当たっています。年間外来患者様は3000-4000名前後、入院患者様は300名前後で推移しています。

診療の特徴として、カテーテル検査のような侵襲的検査への依存が少ないことが挙げられます。カテーテル検査は先天性心疾患の診断に大きな力を発揮し、一般にカテーテル検査件数は手術件数の約2倍程度の施設が多いですが、当院では北関東以北最大規模の年間約150件の手術に対してカテーテル検査件数約150件 (カテーテル治療数 48件: 2022年実績)で良好な成績を得ています。年間約2000件の心臓超音波検査、最新鋭の心臓MRIや320列CT、運動負荷生理検査、核医学検査等国内一線の精度を誇る診断技術を駆使し、患者様個々に詳細に検査計画を検討している結果です。一方、カテーテル検査は対象とする病態を厳密に選択し、必要な患者様には安静時だけでなく、負荷がかかったときの心臓・血管の挙動までも詳細に評価し、疾患の短期的、長期的問題点に基づいて、最も有効な医療を提案するよう心掛けています。

小児循環器専門医は患者さんが生まれる前から成人期以降も、御家族と一緒に治療しながら成長を見守る役割を果たします。スタッフ一同、お子様の視点で、常に最善の医療が提供できるよう日々研鑽を積んでおりますので、自信をもって御来院・御紹介いただけましたら幸いです。また、複雑心疾患やフォンタン循環等の重症疾患に対する病態・治療の御相談・セカンドオピニオンも遠慮なく御相談ください。

取得可能な資格

  • 日本小児循環器学会専門医
  • 日本循環器学会専門医
  • 日本超音波医学会専門医・指導医
  • 胎児心臓病学会 胎児心エコー認証医
  • 日本成人先天性心疾患学会専門医

循環器グループでは1年単位で小児循環器病学・循環生理学の研修を受け付けております。小児循環器専攻の方だけでなく、新生児学や小児集中治療を専攻する先生で血圧や心拍出量の変動の機序や管理方法等を学びたい先生方も有益な研修ができると思いますので、奮って御相談ください。
Email: hsaiki〔et〕iwate-med.ac.jp (〔et〕= @) 

岩手県立中部病院でも小児循環器専門医修練の一部が可能となっておりますので、興味があるかたはお問合せください。

スタッフ

齋木 宏文准教授小児科専門医・指導医
日本小児循環器学会専門医・評議員・編集委員・渉外委員
(Association for European Pediatric Cardiology)
成人先天性心疾患専門医 (小児科分野・循環器内科分野 認定)
日本循環器学会専門医
日本超音波医学会専門医・指導医
日本胎児心臓病学会認証医
日本心臓病学会特別正会員 (FJCC)
American Heart Association 特別正会員 (FAHA)
日本先天性心疾患カテーテル治療学会幹事
日本小児心電学会幹事
日本小児肺循環学会幹事
小児循環器修練施設 指導責任者
中野 智講師日本小児科学会専門医
日本小児循環器学会専門医
佐藤 啓助教日本小児科学会専門医
日本小児循環器学会専門医・評議員
桒田 聖子任期付助教日本小児科学会専門医
日本小児循環器学会専門医・評議員
高橋 卓也専攻医小児循環器専門修練医
清野 精康専攻医小児循環器専門修練医
松尾 悠専攻医小児科専攻医
滝沢 友里恵岩手県立中部病院日本小児科学会専門医
日本小児循環器学会専門医
小児循環器修練施設 指導責任者
齋藤 寛治盛岡赤十字病院 医師
工藤 諒八戸赤十字病院 医師
小山 耕太郎顧問
新生会みちのく
療育園 施設長
新生会みちのく療育園 施設長
日本小児科学会専門医・指導医
日本小児循環器学会評議員・専門医
日本超音波医学会専門医・指導医
日本成人先天性心疾患学会評議員・専門医
日本心エコー図学会専門医
日本心臓病学会特別正会員 (FJCC)

研究内容

  1. 先天性心疾患の病態に関する研究
  2. 先天性心疾患のカテーテル治療に関する研究
  3. 小児の心筋と血管の機能に関する研究
  4. 小児の冠動脈血流に関する研究
  5. 胎児・新生児の末梢循環に関する研究
  6. 先天性心疾患の画像診断に関する研究
  7. 小児の不整脈機序に関する研究
  8. 肺高血圧に関する研究
  9. 先天性心疾患に合併する門脈体循環短絡の研究
  10. 胎児・新生児心疾患の遠隔診断に関する研究

留学先

  1. 米国カリフォルニア大学ロサンジェルス校
  2. メイヨークリニック 心臓血管病部門 循環不全研究室・小児病院 循環器部門
  3. シアトル小児病院 心臓センター

国際誌学術論文

  1. Reversible complete atrioventricular block in a neonate with maternal anti-Sjögren’s syndrome-associated antibody: atypical phenotype of autoimmune congenital heart block. Saiki H, Saito K, Sato A. Cardiol Young. 2023 Jul 19:1-4. doi: 10.1017/S1047951123002512.
  2. Abnormal inferior vena cava course mimicking inferior vena cava interruption with azygos continuation in the postoperative patient with omphalocele. Takahashi T, Saiki H, Sato A, Nakano S, Sato Y, Koizumi J, Akasaka M. J Echocardiogr. 2022 Sep 21. doi: 10.1007/s12574-022-00589-2.
  3. Shear wave dispersion to assess liver disease progression in Fontan-associated liver disease. Nagasawa T, Kuroda H, Abe T, Saiki H, Takikawa Y. PLoS One. 2022 Jul 8;17(7):e0271223. doi: 10.1371/journal.pone.0271223.
  4. Chronological T-wave alternation before and after the onset of arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy. Sato A, Saiki H, Kudo M, Takizawa Y, Kuwata S, Nakano S, Sato Y, Miura K, Oyama K, Akasaka M. Ann Noninvasive Electrocardiol. 2022 Nov;27(6):e12965. doi: 10.1111/anec.12965.
  5. Effect of Minocycline Pleurodesis in Infants With Refractory Chylothorax After Palliative Surgery for Complex Congenital Heart Disease. Saito K, Saiki H, Tsuchiya S, Takizawa Y, Sato A, Goto T, Toya Y, Matsumoto A, Koizumi J, Oyama K, Akasaka M. Cureus. 2022 Mar 26;14(3):e23506. doi: 10.7759/cureus.23506.
  6. Distal arch replacement for aortic aneurysm associated with pseudocoarctation through the L-incision approach. Goto T, Koizumi J, Saiki H, Kin H. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2022 Jun 15;35(1):ivac094. doi: 10.1093/icvts/ivac094.
  7. Early Ventricular Septal Defect Closure Prevents the Progression of Aortic Regurgitation: A Long-Term Follow-Up Study. Sotodate G, Oyama K, Saiki H, Takahashi S. Pediatr Cardiol. 2021 Oct;42(7):1607-1613. doi: 10.1007/s00246-021-02647-5.
  8. Venous Properties in a Fontan Patient with Successful Remission of Protein-Losing Enteropathy. Kuwata S, Saiki H, Takanashi M, Fukunishi T, Miyaji K, Senzaki H. Int Heart J. 2021;62(3):710-714. doi: 10.1536/ihj.20-687.
  9. Echocardiogram Unmasked Hemodynamic Advantage of Atrial Pacing in Securing Ventricular Preload in a Fontan Patient with Junctional Rhythm. Saiki H, Kawada K, Kuwata S, Takanashi M, Fukunishi T, Miyaji K, Senzaki H. Int Heart J. 2021 Mar 30;62(2):448-452. doi: 10.1536/ihj.20-461.
  10. Prevalence of Short Stature and Growth Hormone Deficiency and Factors Associated With Short Stature After Fontan Surgery. Matsumura S, Yana A, Kuwata S, Kurishima C, Saiki H, Iwamoto Y, Ishido H, Masutani S, Senzaki H. Circ Rep. 2020 Mar 14;2(4):243-248. doi: 10.1253/circrep.CR-20-0009.
  11. Comparing risk factors associated with the late detection of critical congenital heart disease at different facility levels. Sotodate G, Oyama K, Saiki H, Matsumoto A, Konishi Y, Toya Y, Takashimizu N, Tsuchiya S. J Obstet Gynaecol Res. 2021 Mar;47(3):961-967. doi: 10.1111/jog.14623.
  12. Successful salvage of the left pulmonary artery in a neonate with isolated unilateral absence of the pulmonary artery. Kawada K, Saiki H, Kemmochi M, Kuwata S, Takanashi M, Miyaji K, Senzaki H. J Cardiol Cases. 2020 Jan 10;21(5):169-171. doi: 10.1016/j.jccase.2019.12.004.
  13. Blood reservoir function in patients with Fontan circulation and asplenia syndrome. Fuse M, Sugamoto K, Kuwata S, Sekiya R, Kawada K, Toki M, Kaneko M, Iwamoto Y, Ishido H, Masutani S, Kenmochi M, Saiki H, Senzaki H. Cardiol Young. 2019 Aug;29(8):1016-1019. doi: 10.1017/S104795111900129X.
  14. Fenestration in the Fontan circulation as a strategy for chronic cardioprotection. Saiki H, Kuwata S, Iwamoto Y, Ishido H, Taketazu M, Masutani S, Nishida T, Senzaki H. Heart. 2019 Aug;105(16):1266-1272. doi: 10.1136/heartjnl-2018-314183.
  15. Thyroid Function in Patients With a Fontan Circulation. Kuwata S, Takanashi M, Hashimoto M, Iwamoto Y, Ishido H, Masutani S, Saiki H, Sugamoto K, Senzaki H. Am J Cardiol. 2019 Mar 15;123(6):979-983. doi: 10.1016/j.amjcard.2018.12.005.